弁護活動のポイント
⑦「公判準備・尋問準備」
刑事事件の公判で、弁護人の技量によって変わりうるものとして、
① 冒頭陳述
② 検察官証人に対する反対尋問
③ 弁護側証人や被告人質問における主尋問
④ 最終弁論
があります。
冒頭陳述とは、裁判のはじめに、弁護側が明らかにしたい事実を簡潔に述べるものです。最終弁論とは証拠調べがすべて終わった後に、証拠から弁護人が求める結論(たとえば無罪)を論証説得することです。
刑事事件の公判は、それぞれ1回切りの本番勝負です。失敗したからもう1回やらせて欲しい、ということはできません。
そのため、事前に十分に準備をして臨むことが不可欠になります。
公判が始まる前の準備において、最も重要なことの1つは、公判の予測です。検察官がどのように主張してくるか、証人はどのような答えを述べるか、の予測です。
この予測は、① 徹底した証拠開示、② 検察官の立証構造の把握、③ 証人との事前面談、④ 経験 が影響します。
徹底した証拠開示や検察官の立証構造の把握のためには、公判前整理手続を行うのが必須です。
さらに、最終弁論を見据えて一貫した戦略(ケースセオリー)の下に、個々の活動を行うことも必須です。
- どのような理由で弁護人が勝つべきなのかの戦略(ケースセオリー)がない
- 事前に最終弁論を考えていない
- 被告人や証人と十分な打ち合わせをしない
- 期日が終わってから初めて次の期日の準備をする
一貫した戦略を立てるには、公判の予測が大事ですが、この予測に刑事弁護人としての経験が大きく影響します。
否認事件といっても、様々な争い、闘い方があります。罪名自体もたくさんの種類がありますが、同じ罪名でも、医師などの専門家意見が問題になる事件、共犯者・被害者の証言が問題になる事件、情況証拠が問題になる事件、などです。
否認事件を扱ったことがあっても、同様の事件を扱ったことがなければ初心者も同然という場合もあるのです。
公判の準備において、一貫した戦略を立てるということは、訴訟の最後に行われる最終弁論を、公判が始まる前の準備の段階で既に出来ていなければならないということを意味します。
弁護士の中には、ある期日の準備をして、その期日が終わると次の期日の準備をするという仕事の仕方をする人がいます。しかしそれでは、無罪というゴールに向かうために、今何が必要か、何をしておくべきか、という発想が抜け落ちてしまうのです。