弁護活動のポイント
②「検察官請求証拠の入手」
検察官は起訴がされるまでの期間に捜査をして、膨大な証拠を集めています。証拠としては、警察・検察が人の話を聞き取った内容や捜査内容をまとめた書類、写真、物そのもの、鑑定の結果、データの解析結果など、様々なものがあります。
これらの証拠がすべて裁判に出てくるわけではありません。
検察官は、これらの膨大な証拠を選別し、犯罪事実を立証するために裁判官に見せたい、と考える証拠を抜き出して、取調べを請求します。これを「検察官請求証拠」と言います。
弁護人は「検察官請求証拠」を、裁判の前に見て確認することができます。これを「開示」を受ける、といいます。証拠の分量にもよりますが、起訴されてから2、3週間程度で開示されることが一般的です。
弁護人の弁護戦略は、検察官請求証拠を見てはじめて構築することができます。なるべく早く検察官請求証拠を確認して、検察官の主張の根拠はなにか、今後どのような証拠を手に入れなければならないのか、検討しなければなりません。
開示を受ける方法は、いくつかパターンがあります。弁護人が方法を選択し、開示を受けることになります。
大原則は、コピー(謄写)を請求することです。謄写の費用はかかりますが、証拠は当然に何度も見返すものですので、手元にコピーを手に入れることは当然です。
また、証拠の細部が重要になります。白黒では、写真にうつっている人の姿や証拠物の色や形などが十分に把握できないこともあります。カラーコピーを求めなければなりません。
さらに、証拠物については、その色や形だけでなく、大きさや重さなどが問題になることもあります。証拠物のコピーはできませんので、検察庁や警察署に弁護人が出向いて直接見せてもらう方法で開示を受けます。証拠物を弁護人が実際に目で見て、触って確認して、生の情報に触れることが、重要な事実の見落としを防ぐことに繋がるのです。
また、証拠は弁護人だけが確認すれば済むものではありません。依頼者である被告人にも速やかに渡して、証拠内容を確認してもらう必要があります。被告人が関係者が話している内容や写真などをみて、記憶が思い出される、あるいは重要な事実に気づいて、それが突破口になるといったことは珍しくありません。
弁護人は、原則として全ての請求証拠のコピーをとって、被告人に渡して、証拠の内容を細かく確認してもらうようにしなければなりません。
そして、証拠の内容を見ながら、弁護人と被告人が打ち合わせを繰り返して、ベストな弁護方針を検討していくのです。
- そもそも検察官請求証拠をコピー(謄写)せず、弁護人が一回見るだけで済ませてしまう
- 検察官請求証拠をコピー(謄写)するが、写真などの証拠も特に理由なく白黒コピーで済ませてしまう
- 検察官請求証拠をコピー(謄写)するが、依頼者自身に証拠を確認してもらわないままにする