裁判員裁判への取り組み
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裁判員裁判への取り組み
殺人事件、傷害致死事件、一定の放火事件、覚醒剤の密輸事件など、裁判員裁判の対象とされている事件があります。
裁判員裁判では一般市民の方が裁判員となり、有罪無罪と刑の重さを判断することになります。
法律・裁判に馴染みのない一般市民である裁判員の共感を得て、説得する弁護活動が必要です。
そのために重要なのは3つの点です。
1. 一般市民の立場に立って考える
裁判員裁判の弁護活動として、一般市民の立場に立って考えて、主張や証拠内容を分かりやすいものにする必要があります。
一般の裁判では刑事裁判も民事裁判も、弁護士の主張や提出する証拠内容は、難解な法律用語や法律概念などであっても裁判官は当然理解してくれます。
しかし、裁判員裁判では、一般の裁判と同じように弁護士が主張したり証拠提出を行ったりしていては、裁判員には理解不能な内容になりかねません。
それは単に法律用語や専門用語だけの問題ではありません。
刑事裁判では、過去にどういう事実があったかについて証拠から判断することになりますが、証拠の見方や証拠から言えることについても、市民の共感を得るものでなければなりません。
ここで弁護士には、司法試験の合格のために勉強してきた法律の専門知識ではなく、その弁護士の総合力が要求されるでしょう。
2. セオリーを厳選して確立する
どうして無罪であるのか、説得的な内容になるよう裁判が始まる前に主張内容を徹底的に厳選し、完成させる必要があります。
無罪である証拠や理由を多くあげる。それで説得的な内容になるというものでは全くありません。
証拠や理由を多くあげるほど、決定的な証拠や理由はないと思われてむしろ説得力を失いかねません。
また、長々と証拠や理由の説明を行うことは裁判員にとっては分かりにくく、やはり説得力を失わせるものです。
どうして無罪なのか、主張内容を徹底的に厳選する必要があります。
裁判員裁判では、裁判が始まってから証拠を追加することは原則として認められないルールとなっています。
証人尋問が終わった後になって、追加で証人に尋問をしたいと思ってもやはり手遅れです。
裁判が始まる前に、どうして無罪なのか、証拠を説明する説得的な内容を完成させる必要があります。
ここでは弁護人に、一定の裁判員裁判の経験が求められます。起訴された時から公判を見通して活動するための経験値が必要です。
3. 法廷技術が必要
法廷で行われる尋問や弁論などには、法廷技術が必要です。
これまでの刑事裁判は、書面審理が中心で、裁判の期日も五月雨式で裁判官が後で裁判官室で書面を読むのが通常でした。
しかし、裁判員裁判は違います。
裁判員が主張や証拠内容の書面を自宅に持ち帰って読むということはありません。
実際の法廷の場で、弁護士が主張した内容、説明した内容、証人や被告人が質問に答えた内容が全てです。
法廷の1回切りの裁判で証人尋問を成功させ、弁論によって裁判官、裁判員を説得する必要があります。
法廷で行う弁護士の主張、証拠内容、尋問内容について、裁判員にもその場で聞いて理解し分かってもらうようにするためには、弁護士において技術が必要です。
こうした法廷技術は裁判員裁判が行われるようになるまで、弁護士においても意識されていませんでした。
簡単に習得できる技術ではありません。
裁判員裁判の施行から、弁護士会等で法廷技術の研修が行われるようになり、そこで研鑽を積んだ弁護士とそうでない弁護士とでは、弁護活動のスキルに大きな差が生まれます。