否認事件の控訴審
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否認事件の控訴審
第一審で有罪判決を受けてしまった場合、被告人は控訴をすることができます。
控訴審は、高等裁判所で審理がされます。第一審で行われたような審理が一から繰り返されるのではなく、第一審判決の結論や判断方法に不合理な点がないか、という点が検討されます。
第一審での結論が控訴審で覆され無罪となる事例は決して多いとは言えないものの、弁護人の技量や経験によって結論は大きく変わります。
弊所が扱った案件でも、控訴審の弁護活動が功を奏し、逆転無罪判決が下された例は何件もあります。
控訴審での弁護活動のポイントについてご紹介します。
1.趣意書の作成に全力を傾ける
控訴審での弁護人の活動の9割は、「控訴趣意書」を作成することに尽きます。
控訴趣意書とは、第一審の判決の問題点を説明し、高等裁判所を説得するために弁護人の意見を記載した書面です。
控訴趣意書を読んだ裁判官が、第一審判決に疑問を持たなければ、控訴は認められず簡単に棄却されてしまいます。
充実した内容の控訴趣意書を作成するのが控訴審の弁護活動の命です。
控訴趣意書を作成するために、弁護人は第一審の判決や訴訟記録を細部まで徹底的に分析します。そして、判断過程が論理や常識に照らして不合理でないか、細かく指摘するのです。
控訴趣意書は、相当大部に及ぶことになります。数十頁は珍しくなく、百頁を超えるような分量のものを提出することもあります。
勿論、分量が多ければ多いほど良いということは全くありません(端的でわかりやすい趣意書を出す、というのはとても重要です)。
ですが、弁護人によっては、真摯に検討したとは思えないような内容の、数頁程度のごく簡単な趣意書しか提出しないことがあります。
このような表面的な趣意書では、第一審判決の結果を覆すことなど到底できません。
弊所は受任してからすぐに記録を検討し、控訴趣意書の作成にとりかかります。
判決や記録を読み返しながら何度も内容をブラッシュアップし、説得力のある控訴趣意書を作成することを心がけています。
内容面だけでなく、如何に効果的に主張を伝えるか、という「書き方」についても、研鑽を積んでいます。
2.記録を一から見直す
控訴趣意書を書くためには、先入観をもたず、第一審の公判の記録や証拠を一から見直すことが重要です。ただ見直すだけではなく何度も検討する必要があります。このような作業を経て、第一審の審理の問題点や、判決の不合理さが見えてくるのです。
そのために、第一審の記録を速やかに、もれなく入手しなければなりません。控訴審から新たに受任する場合には、第一審を担当した弁護人から引き継ぎを受けるのが一般的です。
第一審の弁護人と連絡を取ることすらしなかったり、第一審の弁護人から記録の引き継ぎを受けられることを知らなかったりする弁護人も中にはいます。これでは、控訴趣意書を速やかに作成できませんし、検討する記録に漏れがあれば十分な主張ができないことになってしまいます。
また、第一審の弁護人が、検察官に対して十分な証拠開示を求めておらず、そのため重要な証拠が第一審の弁護人の手元にすらないことがあります。
弊所では、重要な証拠について未だに開示を受けられていない場合、検察庁と交渉し、また裁判所に証拠開示命令を下すよう働きかけて、検察官から新たに証拠を入手することも行っています。
ただし、検察官から開示を受けるのは、第一審よりはずっと困難にはなりますので、第一審の段階で漏れなく開示を受けておくことが何より重要です。
3.新たな証拠を提出する
控訴審で審理の対象になるのは、原則として、第一審で取調べられた証拠や証言のみです。新たな証拠が提出され、取調べられるのはあくまで例外的です。
ただし、第一審で提出できなかったことについてやむを得ない理由がある場合や、証拠の重要性によっては、控訴審でも新たな証拠が採用されます。
控訴審での新たな証拠の取調べを、事実取調べといいます。
第一審判決の誤りを指摘するためには、新たな証拠を高等裁判所に提出することが極めて有効です。
弁護人は必要な証拠については、事実取調べを請求し、採用を求めなければなりません。
事実取調べを請求することを検討すらしない弁護人もいますが、そのような姿勢は非常に問題です。
また、事実取調請求をしたとしても、裁判所は基本的には採用に消極的です。
事実取調請求により、新たに証拠を採用させられるかどうかは、証拠の重要性ややむを得ない理由があることをアピールする弁護人の手腕にかかっています。