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当事務所の無罪事例【上訴審無罪】

住居侵入、窃盗被告事件

事案の概要
約3ヶ月の間に、住所地と異なる都道府県において、深夜、無施錠の居宅に侵入して金品を盗む事件を4件行ったとされる事案。
第一審は4件全てについて被告人の犯人性を肯定した。控訴審から弁護を担当した。

争点
控訴審でも、4件全ての犯人性が争点となった。

審理の内容
 第一審判決は、これら4件の事件が同一犯人であることを推認させる事情がないにもかかわらず、4件それぞれの事件における事実関係に先立って4件の全体的考察を行った。当該考察では、4件いずれもが被告人の住所地と異なる都道府県において発生した事件であるところ、被告人が犯行時間帯に犯行現場にアクセス可能な場所におり、被害品を所持していたという事情からすれば、被告人が4件の犯行に何らかの形で関与していることが強く推認される、と評価した。
さらに、その後の各事件の事実関係の考察では、他の事件の犯人であること等を繰り返し挙げて各事件の犯人性を認定していた。
担当弁護士は、こういった4件の全体的な考察をすることが本件では誤りであり、個々の事件の事実関係のみを前提とすると、いずれの事件でも被告人の犯人性を肯定するに足りる事情がないことを主張した。
 
弁護活動のポイント
4件の事件相互の繋がりが全くない本件において、4件の全体的考察によって被告人が4件全てに何らかの形で関与しているという新たな推認力を付与することは、実質的には各間接事実の推認力を何重にも評価していることになり、論理則違反であることを指摘した。
また、第一審判決が、他の事件で犯人であることを別事件の犯人性の間接事実にすることは悪性格立証であることも指摘した。
そして、こういった違法な推認過程や誤った論理則を用いることなく、純粋に個々の事件の事情のみを検討した場合には、犯人性の推認に足りないことを緻密に議論した。
以上のような主張を立証するために、被告人質問や証人尋問を始めとして、複数の証拠を請求した。
 
判決の内容
4件中3件については、被告人が犯人であることを認定できる。
4件中1件については、被告人が犯人であることを推認させる前提を欠くというべきであり、被告人は無罪。
判決の理由中では、4件の犯人が同一であると推認できるような顕著な特徴などはなく、第一審判決が4件の全体的考察を行ったことや、別事件の犯人であることを他の事件の犯人性の間接事実としたことは、適切ではないとされた。
その上で、各事件固有の間接事実が検討され、4件中1件は被害品を所持していたことに間違いがないとは認め難いとして、無罪が言い渡された。
 
判決日
東京高等裁判所 令和6年1月26日